Previous month:
January 2008
Next month:
March 2008

ワープロの新しい価値

小学校の先生からすばらしいコメントをいただきました。

横浜で小学校の教員をしています。 今日も、egword Universal 2でおたよりを作りました。 子どもたちの日記を集めた物で、縦書きの2段組です。レイアウトグリッドを使っているので、上下の行がそろってきれいにできます。 スマートインライン変換のおかげ、小学生向けの中途半端な漢字とかなの交じった文章の入力もだいぶ楽になりました。 ワープロの新しい価値って何でしょうね? 自分の日記がおたよりに載った子どもたちは、 「わたしの日記がおたよりにのってうれしかったことを今日の日記に書きたいです。」といいます。

私が作っているものは単なる道具にすぎません。それを使って生み出されるコンテンツにこそ価値があり、そのコンテンツは人々に新しい知識を与え、心を揺さぶり、世界を変える事もあります。価値あるコンテンツを生み出すのは常に人間であるユーザです。道具が世の中を変えられるなどという考えは傲りであり、大ヒットしているiPod もすばらしい音楽があるからこそ存在意義があるのです。

ワープロはビジネスツールとして生産性を高める事に重きを置いて発展してきました。請求書のような定型文書を効率よく書くことができ、チラシならワードアートでちょちょいのちょいというわけです。さらにあらゆる文書作成で使えるように様々な機能が追加されてきました。

このように文書作成ツールとして確固たる地位を築いたように見えたワープロでしたが、定型文書はデータベースに、見栄えが重要な文書はパワーポイントというように、ユーザは他のジャンルのソフトにどんどん乗り換えていきました。本来の使い方であるシンプルな長文作成をしようと思っても重くて使えないという声をよく聞きます。万能ナイフは手持ちの道具がそれ1本しかないときには大いに役に立ちますが、使い勝手は専用の道具にかないません。

私がまず最初に取り組みたいと思うのは、文章を書くためのシンプルな道具です。万能ナイフではなく切れ味のいいフォールディングナイフのような道具です。書く人が集中できて気持ちよく書くことができ、出来上がったものを気持ちよく読んでもらえる、そのお手伝いをさせていただければと思います。これまでにそういうコンセプトで作られた製品もありましたし、私の尊敬する方が作っているシェアウェアも同じ気持ちで作られています。

「この製品を使ってどんな文章を書いてもらえただろう、その文章はどんな風に読まれたのだろう」と、いつも楽しみに思えるようなモノづくりを心がけていきたいと思います。これが私の考える新しい価値です。

いつの日か私の作った道具でどんどんコンテンツを生み出してもらえるようにがんばります。

よく尊敬する上司に言われますが、私はワガママなガキなんだそうです。


コーディング

Coding

皆様こんばんは。
未だ社名も決まらぬ近い未来に自分で始める会社のために、夜中にコードを書き始めていたりする、もうすぐ36歳のCocoaプログラマーです。
僕らのような日本のMacプログラマーは会社のボスからは絶滅危惧種と呼ばれています。

これは文字コードをグリフに変換するコードの一部。
根っこの方はObjective-C では呼び出しのオーバーヘッドが大きいからC で書いてます。C++でもいいのかもしれませんが、僕はObjective-C とC++ は一緒に使いません。CoreFoundation を使うたびにキャストしろとうるさくて、Objective-C のようなゆるい型を使う言語と一緒に使うと調子が狂うからです。

変数の宣言を上にまとめているのは今風ではないですね。でも一番上に宣言しておくとデバッガが関数を出るまでその変数の値を表示し続けていてくれます。スコープを抜けた瞬間に、あれ?いくつだったけということがないから僕はこうしています。C しか使わないからコンストラクタやデストラクタもなく僕はスコープを気にしません。

CFString にキャストしているのはパフォーマンスのため。-[NSString characterAtIndex:] は遅いから絶対に使ってはいけません。速いコードはお客さまにもストレスがないし、CPUを浪費しないから環境にも優しいと思うのです。

市場に出る製品のプログラミングとはどんなものなのか、こういう仕事に興味がある若い人はとても知りたいのではないかと思います。少しずつ紹介していければと思います。そういう若い人がきっといることを願って。。。


市場横ばいだけが理由ではない

Alternates

皆様、たくさんのコメントありがとうございました。

「Mac の日本市場」ではApple が発表した数字をもとに日本市場の現状を紹介したのですが、これだけが事業終了の理由ではないことを追記します。

皆様からのコメントを拝見していて少し不安になったので、このブログを参照しているページを検索しました。その中に「市場横ばいは事業撤退の理由になるのだろうか」と書いていらっしゃる方を見付け、「市場横ばいだけが理由」という印象を与えてしまったのではないかと反省しました。

成熟市場でこそ真価を問われます。特に自動車や家電のような産業はそうです。市場が成長しないから撤退というのではコンピュータよりずっと前からある産業はみんな廃業ということになってしまうでしょう。これはその方も的確に指摘されていました。成熟市場におけるダイソンの掃除機などはこの手の話によく登場します。

厳しい環境の中で日本語ワープロと日本語入力というベーシックなものに新しい価値を加えられなかった私たち自身に一番の原因があります。egbridge ではそれまでの仮名漢字変換の枠にとらわれずにいろいろと試みましたが、他の製品を使っているお客さんをたくさん取り込めるほどには魅力がなかったということだと思います。

その点ではヒラギノ2万字対応はそれまでにない画期的で魅力的な機能だったかもしれません。
漢字にはちょっとした書き方の違いから「異体字」と呼ばれるものが何種類もある文字があります。ヒラギノにはこういった漢字がたくさん含まれているのですが、それまでのワープロや入力ソフトでは入力できませんでした。

最初は「せっかくたくさん入っているのだから全部入力できるようにしよう」という技術的な発想からスタートしたのですが、発売してみると「自分の名前がちゃんと出る!」「お客さんの名前がちゃんと出る!」といった反響がすごく、Macworld Tokyo のKeynote でデモをした効果もあって売り上げがグッと伸びました。

標準でも電子辞典がバンドルされるなど日本語環境が充実して来た事もありますが、そういった厳しい環境に負けることなく新しい価値を生み出し続けることができず申し訳なく思います。

追記の追記;
どんな環境にあろうとも「俺たちが世の中を変えてやろう」というApple のしつこいくらいの情熱には頭が下がります。iPod もMac OS X も最初に出て来たときはずいぶんバカにされてました。日本市場が少し上向いて来たのも、アップルジャパンの方々がこつこつと地道な努力を続けてきた結果だと思います。その成果がこの四半期に花開く事を願っております。